彼に負けじとメイクする私はどうなんだろうと思う、女として。正直そんなに得意ではないし、慣れない手つきが普段あまり化粧しないことを示している。よし。私は手を止めて鏡を再度覗く。自分の化粧した顔なんて見慣れなくて、なんだか変な感じ。目頭の下のラインにホワイトを入れると潤んだように見えるのって本当なんだーなんてちょっと感動したりして。
今日は久しぶりにベイとは全く関係なく会える。と言っても、そんな大袈裟なものでもなく、ただのんびりするだけだが。
「流太郎」
「…なまえ」
戸が開くや否や目が合って直ぐに腕の中。彼はそんなに積極的な方ではないと思うのだけど。疑問に思いながらも私は腕を回し返す。ああ、流太郎の匂いだ、私はすごくほっとする。でも再会の抱擁にしては長い。そんなに長期間会っていなかった訳ではないし。それに顔が見たい。
「りゅーたろー…っ」
私はもぞもぞと放して欲しそうに身を捩る。彼は逆に一層腕に力を入れる。
「その、」
「ん?」
流太郎が小さく声を発して私は聞き逃さないように身動きを中断した。
「…そんな目で我を見るでない、」
なんて、可愛い彼は、そう、言うのだ。私は一瞬意味が分からなくて、それからギュウと彼に回した腕に力を込めた。愛しくて爆発しちゃうんじゃないかと思った。このままお互い溶け合えたらいいのに。
「可愛い」
彼氏に言う台詞ではない気もするけど、精一杯に気持ちを込めて私は言う。彼はガバッと私を放す。案の定、困ったような顔で、でも少し赤くて。
「それは、そなたの方が、」
「流太郎のが可愛い」
「…」
「…」
「…いつものままで良い」
「なんで?」
私達は指を絡めて向き合って。
「のう、なまえ」
「なに?」
私達は額を合わせて。
「のう、」
「ん、」
私達は口付けを交わす。





化粧は女の子の味方

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