雨が地面を打ちつける音で目が覚めた。ザアザアと恐ろしさを掻き立てる他には何も聞こえない。暁の頃だけれど勿論窓の外は雲の黒と降りしきる白で何も見えない。家でのんびり過ごすのは好きだが、この天候だとどうしようもなく不安に駆られてしまう。
「何も起きなきゃいいけど…」
怖がる自分に乾いた笑いを少し発して立ち上がろうとすると、一瞬目が眩むように明るくなって間を開けずにバンッと割れるような音と共に電気が落ちた。停電。こんな天気だけど平和に過ごしたいと思った矢先で漸増に恐怖が込み上げる。兎に角落ち着かなきゃ。ふうと息を吐いたところでピンポーン、チャイムが鳴り体は飛び上がった。電気の回線とチャイムは違う仕組みなの?
「も、やだ…」
泣きそうな私はそれでもその訪問者が安心感を与えてくれるんじゃないかと希望に縋るしかない。暗い足元に集中して玄関のドアを開く。
「どちら様…で…す、か」
目に映った豪雨でしとどの人に腰が抜けた。びっしょりと濡れたその人はこちらに手を伸ばす。立てない。もう立てない。
「私、死ぬのか…?」
「あの」
「ひいっ…」
肩に冷たい手が触れて、と思ったら抱き締められて、私も冷たく…あれ、この感じ。
「水、地?」
視界が悪いせいで相手を色彩で捉えるのは難しいけれど、そうなのだろう。細く角張った指先が私の項を掠めた。震える体が収まっていくのが分かる。
「ど…したの?」
「こ、」
耳元に水地の顔があるせいか、すごく頭に響く。
「こ?」
「こわい」
この人はなんて可愛いんだろう。小動物かなにかなんじゃないだろうか。なんだか私はすっかり怯えがなくなった。引っ付いて離れない小動物を家に導く。とりあえず着替えないと。先の抱擁でぐしょぐしょに濡れた私の服も。適当にTシャツとジャージを渡すと、私は自室へ戻る。着替えたらなんかあったかいもの飲んで…とか思ったけど、電子レンジ動かないのか。考え事していたら開いたドアに気付かなかった。
「寂しいよ」
「ちょ、うわっ!」
着替え途中で半端な格好の私にくっ付く水地。腰のあたりを冷たい手がなぞる。ひっ、と、私の声が漏らす。
「す、ストップ!」
「寒いんだよ」
怒りと恥ずかしさで顔が熱くなった。暗くて分からないだろうけど。やっぱり今日は恐ろしい日だ。目の前の男は小動物と言うよりむしろ獣だろう。クク、と聞こえた彼の声に最期を感じた。



あっかんべ

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