「水地くん、なにしてんの?」
私の部屋の筈だけど、出掛け先から戻ると部屋に水地くんがいて。声をかけると振り向いて立ち上がる。
「なまえを待ってたんだよ」
「うえっ?!」
ふらふらと歩いてきたかと思うといきなり肩を押さえつけられ閉めた後ろのドアにバンッと背中を打った。そのままずるずると押さえ込まれてへたり込む。水地くんは目が見えず、その真意も見えない。恐々、私は言葉をかける。
「あの、」
顔がやたらと近づいて私は咄嗟に目を瞑る。少し期待した唇に感触はなく、代わりに頭に違和感を覚えた。目を開けて手で確認するとふさふさした物が。
「えー…何?」
「にゃん」
「にゃん?」
「そうだよ」
相変わらず目は隠されたままだが、楽しそうに口元が歪む。猫耳が邪魔ではあるが、撫でてくる手が心地良い。
「私より水地くんのが似合うと思うよ」
「…そうかな」
と、もう一つ、耳の付いたカチューシャを取り出した。持ってたのね…。頭の飾りを外すとそれに付け替える。楽しげに見えてちょっと可笑しい。可愛いなーと思って見ていたら、突然組み敷かれた。首筋にベロリと舌を這わす。
「ちょ…ちょっと!」
「にゃん」
前髪の隙間から覗いた瞳は、笑っていませんでした。



赤毛猫ちゃんお戯れ。

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テーマ「人外ファンタジー」
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