「なまえ、手繋ごー」
「え、あ」
確認するまでもなく繋がれた手。何故か得意気に笑うタイシを見たら反論もできない。というか私も繋ぎたいのだから確認もなにもないのだけれど。キュッと握ると引かれて体が寄る。どちらともなくへへっと笑う。こんな可愛くてかっこいい人が彼氏でいいんだろうか。弛む顔の筋肉が戻せない。
「キスしたいな」
「そ…それは」
照れて俯く私と笑顔でグッと顔を寄せたタイシ。
「…他所でやれ」
と、殺気立った櫂くん。
「お、忘れてた」
カタンと椅子を揺らしておどけるタイシに、櫂くんは頗る機嫌が悪そうなご様子。そもそもここは教室で、且つ櫂くんの前の席である。
「…お前ら帰れ」
「おっと、行くなよ!櫂に用があって来たんだってば」
席を外そうと立ちかけた櫂くんを引っ張り戻す。
「櫂くん、ちょっと意見をくれればいいから…」
すがるように見上げれば、一瞬眉を寄せるも渋々再び座ってくれた。私たちも座り直す。机を挟んできちんと向かい合うのが面接みたいで変な感じだ。
「実は…」
「なんだ」
「もし子供が生まれたら、なまえ、女の子ならタイコにするって言うんだ」
「…は?」
「だってタイシの子だしいいと思うよ?」
「でもカタカナだし、ちょっと違うと思うんだよ」
「…待て、」
「じゃあ何がいいのよ」
「だから俺はさ、」
「ちょっといいか」
櫂くんがダンッと机を叩いた音で私とタイシは会話を止め彼に注目。
「話はそれだけか」
「まあ、そうなるよな」
「そうだけど…?」
答えを聞いた櫂くんは深く息をつき、天井を仰ぎ見、
「俺に構うな」
言い放って大股で教室を出て行った。
「ありゃ、行っちゃったよ」
「なにか悪いことしたかな…」
「さあ…にしても櫂はかっこいーな」
「男の子だったらトシキにしようか」
「それもいいな」
廊下で苛立つ櫂くんを他所に、私たちの会話は続くのであった。

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