「店長、好きです」
「にゃー」
「つ、付き合ってください」
「にゃ?」
「なにやってるの」
店長代理を前にしゃがみこんだ私に呆れたミサキさんが声をかける。
「告白の練習です!」
「シンさんに直接言ってあげればいいのに」
「むっ…」
無理無理とブンブン首を振る私に、まあ頑張りなよと言い残してミサキさんは奥に入っていった。
「言えたら苦労しないよねえ」
「にゃーん」
もうとっくに私が店長のことを好きなのは周知の事実。カード目当てに来ていたこの店もすっかり店長目当てになってしまった。始めはレジで何気ない会話なんて事もなくできていたのに意識すればするほど話せなくなった。一度ミサキさんに「シンさんが嫌われたのかと気にしてる」なんて言われたけれどだって顔を見るだけで精一杯なんだと彼女に伝えるしかできなかった。
「私だって店長と話したい…」
「にゃあ」
「店長…」
「なんでしょう」
「好きです」
「それは嬉しいですね」
「!?」
外から帰った店長がドアのすぐ傍に立っていた。吃驚して立ち上がった拍子に目の前にある台に頭をぶつけた。
「いっ…えっと、違っ、これは」
助けを求めるように店長代理を見るもそっぽを向いて丸まっていた。店の中に視線を巡らすとミサキさんが奥から覗いている。目配せするも指でバツを作ってみせられた。仕方ないと店長を見る。彼はうんうんと笑顔で頷いて私のぶつけた頭を撫でた。恥ずかしいのと緊張とで強ばる私をよそに、店長は抱えてきた段ボールを持ち直すとニコニコしながら奥に入っていった。スキップのような足取りの店長に「キモい」と言い放って足をかけたミサキさんがこっちを向いてちょっと笑っていた。

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テーマ「人外ファンタジー」
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