「カツミ、かっこいい」
何の脈略もなく発せられた言葉に、ぶはっと盛大に牛乳を吹く。しれっと突然そう言ったみょうじは顔をしかめ、昼飯を食べ続けている。
「森川がいつも言えって言ってることじゃん」
動揺して噎せる俺にもぐもぐと口を動かしながら話す。
「そ、そりゃあ俺はだなあ」
「うん」
「そう言ったが…」
「うん」
「いきなりだと流石にびっくりすんだ、よ」
「へえ、そう」
二人の屋上は日が差していて温かい。隣でせっせと食事に勤しむ幼なじみの彼女の俺への扱いが冷たいのも馴れたものだが、出来ればもっとこう、可愛げがあってもいいんじゃないのか。今更進展しない関係と言われればそうかもしれないが、それは望んでいないのだ。
「なまえ、か、…かわいい」
目を丸くしてこちらを見た彼女は箸で摘まんだ里芋を落とした。すぐに元の顔に戻ると落とした芋を拾いに前屈みになる。
「…どもってるし」
「す、すまん」
「うん」
拾った芋を睨んだままで俺を見ない彼女の耳は赤く染まっていて、なんだ、意外と簡単なことかもしれない、と、思った。

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