「聞いてよ井崎ー」
「なんだあ?」
「森川ってば彼女の前でコーリンちゃんコーリンちゃんって失礼だよね!」
確かにコーリンちゃんは可愛くて私は大したことないけど仮にも付き合ってて健気にあの馬鹿のこと想ってる女の子の前で他の女の子の話題なんて困るんだけど!と、なまえは俺の机に手を付いて前のめりに言う。
「まあ落ち着けって」
「うわああ…なんで…」
怒っていたと思えば泣き出したこいつは森川の彼女で。
「泣くなって」
「…だって」
「森川はそういうやつだって。分かってて付き合ってんだろー」
「そうだけど…」
森川が彼女の前では何を話していいのか分からず困っているのを俺は知っている。いいやつでいつもは思ったことをザクザク言うくせして好きな人には緊張して上手い態度を取れないことも。
「…」
ポンポンとなまえの頭を撫でる。本当は森川がどんな気持ちで彼女と接しているのか教えてやればいいんだろうが、生憎それが出来ない。
「(…諦めろ、とも言えないけどな)」
まだ彼女が好きで、でも行動は出来ない自分に溜め息を溢す。
「(コーリンよりお前の方が可愛いよ)」考えて呆れる。森川が言ったらどうだろうかとイメージしたら似合わなすぎて口元が弛む。
「井崎なんでにやけてんの」
「…なんでもない」
これでも一応、友人を応援しようという気持ちはあるのだ。

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テーマ「人外ファンタジー」
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