手の甲が触れて反射的に距離が開く。
「あー…悪い」
「う、ううん」
学校帰り以外の初めてのデート。井崎くんの私服が意外と格好良くて緊張が解けない。普段制服しか見ていないせいか、オシャレで気になって仕方がないのだ。並んで歩く途中何気無しにあけた彼側の左手の甲が、井崎くんもこれまた何故かあけている右手に当たった。一瞬のことなのに触れたそこから熱くなって、私は井崎くんを見る。
「…なんだってんだよー?」
「ご、ごめん」
気にしないようにか前だけ向いていた井崎くんが視線だけ私に向けて言う。まじまじと見詰めてしまった視線を反らす。手を繋いだことがないわけではないが、必ずいつもしているわけでもないし、ましてや違う雰囲気の彼にテンパりも増していて。要するに恥ずかしい。
「なんだよー?」
「知らないよ!」
熱くなる体温を振り払うかのようにブンブン腕を振ってズンズン歩く。眉を下げた井崎くんはプッと噴き出して私の手を捕まえた。
「あ、」
「…」
手を繋いだのに余計に開いた体の距離。視線を泳がせる井崎くんの横顔を見て、私も俯く。掌から全身まで体温がおかしい。ただカードキャピタルに行くだけだというのが、こんなに大変なんて。手汗が、なんて全意識を手に集中させていたら気付いたら店まで来ていて、冷やかされたのは言うまでもない。バッと離れた私たちの焦りようはさぞやおかしかっただろう。真っ赤になって、お互い顔を合わせて笑った。

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