「おお!なまえさん!」
久しぶりに訪れたカードキャピタル。ドアが開くと間髪入れずに大きな声で名前を呼ばれる。どうぞどうぞと勧められるままに森川くんの隣に座る。森川くんの向かいに座っていた呆れ顔で「すみません煩くて」と言う井崎くんに大丈夫だよと笑いかける。
「今日はまたどうしたんすか?」
特に用事があった訳ではない。ただ暫く来ない間にこの店の空気が恋しくなった。学校とはまた違う、学年関係なしに同じ目的の下に集まっているこの空間に無性に浸りたくなる。そしてまた、学校にはいない彼に会いたくなって来たともいう。ファイトの途中だったようで広げられたカードの前、森川くんは「よーし華麗に決めてやる!」と目を輝かす。感情に素直な彼が私を気にしてくれているのは接していれば分かる。それを可愛いと思う私は彼が好きで。周りは楽しそうな森川くんを見ては笑う私を見ているから気付いているだろう。分かっちゃいないのは彼だけである。タイシになんでアイツ?と度々聞かれる。負けそうな森川くんに頑張れと言うとそれはもう嬉しそうな顔で「うおお!」と雄叫びを上げる。ほら、可愛いでしょ?結局負けるところとか。「なまえさんの前でこんな…」なんて言って眉を下げるところとか。私がクスクス笑うと耳を赤くして勝者に叫ぶ。
「もう一度勝負しろお!」
騒がしいこの隣の席が心地いいのだ。彼が本当に私を好きになるまで、暫くはこのままで。

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