「なんで俺が」
「タイシと友達でしょ?」
「アイツは俺以外の友達も多いだろう」
「トシキとは違うからね」
「…」
「落ち込んだ?」
返事の代わりにさっき手渡した手紙を額に叩きつけられた。別に痛くはないけれど、トシキの表情は読めなくて困る。
「とにかく俺は渡さない」
タイシに渡してと頼んだ手紙は私の手の中。踵を返したトシキを追って廊下の隅から昼休みの喧騒へと戻る。ふと騒がしい方に目を向けると教室には話題に出ていた黄色い髪。愚痴でも聞いてもらおうか、とトシキの後ろからそちらに足を向け直す。
「なに?」
私のことなんか気にしていないと思っていたトシキが腕をギリと掴んだ。
「何故そっちに行く」
「直接渡そうと思って」
そう告げるや否や私の手から手紙をひったくって破ってしまった。鋭い目はそのままに紙屑となったそれを近くのゴミ箱にぶちこんだ。タイシの「櫂を嫉妬させよう作戦」は成功である。その姿にプッと笑いを溢すとトシキは余計に眉間に皺を寄せた。
「なんだ」
「ね、なんて書いてあったか教えてあげようか?」
「いい」
「遠慮しなくていいから」
「なまえ、だから俺は…」
他人への告白なんて聞きたくないと思っているなら大間違いだよトシキ。私は背伸びして耳元に寄って言う。
「『トシキが私の気持ちに気付いてくれないんだけどどうしよう』って書いたんだけど」
少し揺らいだ表情に、私は不敵に笑う。タイシが口を鳴らして囃し立てたせいであとでファイトでボコボコにされたとか。

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テーマ「人外ファンタジー」
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