(「喧嘩して、また喧嘩して」井崎視点)



彼女が突っかからなければ問題は起きないのに、と思う。森川のことを一番よく理解しているくせに、物足りないと駄々をこねる。
「だから、そうじゃなくて」
「なんだよ、はっきり言わなきゃ分かんねえよ」
そうなのだ、彼女ははっきり言わない。俺にグチグチ言うように、森川にもはっきり言えばいいのに。勿論それは照れからきているのを俺は知っているけれど。
「分かってよ!」
それで怒る。毎回これだ。大体最後には森川が訳も分からず謝って終わりだが、今回は違った。…まあ、原因は俺だ。彼女に相談されて二人きりになっていたから嫉妬だろう。本人は分かっちゃいない。全く損な役回りだ。泣いている彼女の肩を叩いたら戻ってきた森川の行動も嫉妬だろう。全く…。
「俺の気持ちもしらないで」
森川に手を引かれて振り返り反対の手を振る彼女に言ってやりたい。
「…まあ、いいけどな」
こうやって頼られているのは悪くない。森川にしっかりしろよとも言いたいけれど、この状況でもいいから彼女と話したいと思ってしまうのだ。付き合っていてもいい、上手くいくな。なんて、思うものじゃないな、と一人になった教室で苦笑した。

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