「なまえ、さん…?」
「なに?」
「どこです?」
「キッチンだよ」
足音で早足なのが分かる。氷魔が後ろから私の腰を抱きすくめて肩に顔を埋める。なんでもこの間悪い夢を見たとかで、最近不安に駆られることが多い様子。寝起きは特にそう。安心を求めるように私を抱きしめる。
「怖いことなら言ったらすっきりするかもよ?」
「言えば本当になりそうで怖いんです」
腕に力が篭る。私は手にしていたフライパンを置いてコンロを切ると氷魔に向き直る。
「離れていかないでください」
「大丈夫だよ」
子供を宥めるように肩に乗った頭を撫でる。外ではすかしたような彼の弱いところを見られたのは嬉しかったけれど、ずっと一緒にいれば信頼関係から離れていても大丈夫になるかと思っていたのが、今までよりも余計になんだか離れられなくなったというか。
「朝ごはん作るから、待ってて。ね?」
「朝ごはんなら構いませんよ」
「こら」
柔らかい髪から手を離すと、顔を上げた氷魔と目が合う。
「愛してるって言ってください」
「もー」
「離れますから」
「…愛してる」
氷魔の笑顔を見ると自然と愛しくなるから不思議だ。

依存性ラブシック
(病気なのはどっち?)




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