そう言って姿を眩ました大道寺さんが、目の前に現れた。こちらがどんな気持ちで待っていたかなんて分かっちゃいないんだろう。以前と同じ格好に、以前と同じ含みのある笑みを浮かべた顔。
「…なんでいるんですか」
「やっと落ち着いたんでね」
高そうなスーツが似合わない家の戸口である。田舎だが通りに面しているため人通りも多く、田舎故に目立つこの紫の男は注目を集めている。
「とりあえず、入ってください」
「ではお邪魔しましょう」
大道寺さんは散らかった部屋を汚い物のように見回し、ソファに座る。向かいに私も座る。
「もう一度聞きますけど、」
「どうぞ」
「なんでいるんですか」
あからさまに溜め息をつかれる。馬鹿にしたようなところも変わっていない。答える気はないのだろうか。私もはぁと息をついてお茶でも淹れようと立ち上がる。不意に腕を引かれて前にあるテーブルに手をつく。怪しい笑いを浮かべた口元が眼前にある。
「あのあと色々と処理しなくてはならなかったんでね」
テーブルを挟んで顔を合わせる。六角形の眼鏡が近い。
「また、私のもとに来ませんか?」
息がかかるほどの距離で見つめる。この人はこんな田舎娘にご執心なんて、どこまで悪趣味なんだか。そんな人を好きな私も充分悪趣味だけれど。

いつか、また
(今度は部下としてでなく)




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