風の便りで僅かに手に入る情報を元に、彼を追うことしかできない。今思えばもっと話していればと考えてしまうが、竜牙様は人を寄せ付けない雰囲気であり、その雰囲気が私は好きだったのだから仕方がない。
「ここもいないかあ…」
右も左も分からない異国で、私は一人溜め息。自作の似顔絵で情報収集をするも収穫なし。
「はーあ」
どさりと近くの木の根元に座り込み、紙飛行機を作る。何やってんだろうな、私。消息を掴むのさえ難しい人を追いかけて、何になるんだろうか。軽い力で紙飛行機を飛ばすと思いの外よく飛んで、離れた茂みの向こうに言ってしまった。するとそこからカサカサと草の揺れる音。誰かいるのかな。もう手がかりはないしどうでもいいことだ。ふて寝しよう。と、木にもたれ掛かったところで影が差した。
「おい、貴様」
驚きのあまりに口を開けるも言葉が出ない。白い上着を纏ったその人物は私に広げられた紙をズイと突き出して言う。
「これはなんだ」
「…」
「まさか俺の顔だとは言わんだろうな?」
なんだ、分かっているじゃないか。声の代わりに頷く。ビリビリと破ったと思えばそこから現れたのは恐ろしい形相で。
「貴様ごときがこの俺を侮辱するとは…」
「違いますよどこが侮辱なんですか!」
全身全霊を込めて描いたこの似顔絵のどこが侮辱か。
「は…貴様にはこんな風に見えるのだな?」
…確かに美術のセンスは持ち合わせていないけれど…落ち込んだ私は項垂れる。
「すみません、見付けられない訳ですね…」
「全くだ」
「でもお会いできて嬉しいです」
「遅い」
貴様の行動力ならもっと早くに居場所を掴めたはずだろう、そう言われて、何故、と思う。私と竜牙様の接点は本当に限られたものだったから。
「以前からあからさまに俺を眺めておいて、気付かれていないとでも思っていたのか」
むんずと襟元を掴まれ立たせられ、よく表情を見る前に竜牙様は踵を返した。
「え、あの」
「なまえ、貴様の目的は俺と来ることかと思ったが?」
彼は視線だけこちらに送る。まるで私が来ることは当たり前みたいだ。
「…はい!」
気になることがいくつかあったがそれは口端を上げて笑った竜牙様についていけば分かることだろう。

届け!
(実はもう届いていたり)




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