ダーシァンが、来ない。多忙は重々承知だが、やはり約束をしていて待ちぼうけというのは精神的にくる。どのくらい経っただろうか。
「君さ、ずっとそこにいるけど…すっぽかされたとか?」
ガラの悪そうな人に声をかけられた。ダーシァンはそんな人じゃない。分かっているけど寂しくて。そっぽを向いて無視。
「ちょっとちょっと、シカト?」
グッと手首を掴まれる。これを耐えれば…私は目を瞑る。グチグチと何かを言っていた声が、「ひっ」と小さく悲鳴を上げた。
「手を放してもらおうか」
「な、わ、王虎衆の…!」
慌てて駆けていく足音に目を開けると頼もしい背中。
「ダーシァン!」
「すまない、俺のせいで…」
つらそうに見える彼に首を横に振る。安心したら涙が出た。彼が大きな手で拭って、顔を上げる。
「…近いよ?」
「ああ」
至近距離にダーシァンの顔がある。
「ど、どうしたの?」
「キスをすれば許してくれるんだろう?」
さしずめチャウシンの入れ知恵か。腕で胸を押し返すが勝てるわけもなく、真剣な顔が近付いてくる。
「ひ、人目とか、あるから」
「嫌なのか」
「違っ…」
「それならば」
「ちょ、ちょっと!」
「…なまえ」
無意識だろうが低く大切に名前を呼ばれて上気するのが分かる。うっと言葉を詰まらせた私をよそに鼻先が触れる。周囲の視線が痛い。

Help Me !
(かっこよすぎてどうしよう!)




forロニィさん

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