山のように詰まれた可愛らしくラッピングされたお菓子たち。毎年嬉しい限りだが、目当てのものはない。一つ溜め息をついてまた次から次へと訪れる女の子たちに手を振る。
「来ねえし…」
偶然見かけた子に所謂一目惚れというやつだった。スタジアムの近くでよく見かけるから、俺のファンかななんて持ち前のこの性格で話しかけるのは簡単だった。だが彼女は驚いた様子を見せるも嬉しそうな風でもなく、少し言葉を交わしただけで逃げられてしまった。
「むしろ嫌そうだったよな」
俺らしくもなくうなだれる。と、コトリと後ろで音がした。
「あ、」
「…あっ」
俺が余所見をした瞬間を見計らったのか、突然視界に入ったのは待っていた彼女だ。しまったとでも言いたげに顔を歪めて、それでも少し赤くなった。
「来てくれたんだ」
「まあ、…はい」
「うわ、嬉しいんだけど!」
俺が笑顔で取ろうとした手を払われる。無言が数秒。
「…あー悪い、やだった?」
「まあ、はい」
「…何それ?俺のこと馬鹿にしてんの?」
「だって誰にでもそうやって優しくしてるんでしょ?」
お互い睨み合うような形になった。好きな女の子に睨まれる。なんだこれ。だけど俺は生憎女の子の表情を読むのは長けている。泣きそうに見えるのも間違ってないだろう。
「じゃあ、いいぜ」
グッと近づいて鼻先が触れるか触れないか。
「後悔すんなよなまえちゃん」
「なんで名前知っ…」
強く肩を掴んで直ぐに黙らせる。触れた体温が熱くなる。帰さねえよ。



Don't be gentle
(優しくしないで)


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