湯煎にかけた割チョコ。キッチンからリビングへと甘い香りが漂う。
「何を作るんだ?」
「んー、ブラウニーにしようかと思って」
「そうか」
翼はソファでベイをいじっている。外は白く雪化粧。ゆっくり過ごすのは悪くない。彼は大体何かをしているけれど、一緒にいれる時間を持てることが幸せで。何よりあの瞳にあんまり見られていてはおちおち作れるものも作れない。なんて考えながらオーブンへ天板をセットし、少し様子を見ようかなとリビングの方を見れば翼がこちらに顔を覗かせていた。
「っと、なに?」
「いや…」
軽く顎に手を添える姿が様になる。ああ、惚れてるなあなんて考えて少し笑みがこぼれた。
「何でもない」
「…あと一時間は待ってね?」
ソファへ戻る翼に、何気なしにそう声を掛ける。チラとこちらを流し見たその顔に、少し朱が差した気がした。
「…分かっている」
思わずエプロンを放り出して、翼の背中に飛びついた。ただ、愛しくて。



no nothing
(全く何もない)


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テーマ「人外ファンタジー」
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