大人な大道寺さんはきっと安っぽい手作りなんて食べてくれない。と、思って頑張ってちょっと高級なものを買ったというのにこの男。
「お待ちしていましたよ」
大道寺さんは更に上をいく高級チョコレートを、オレンジジュース片手につまんでいる。今日という日を分かっていて、仮にも彼女が来るというのに。
「お邪魔しました」
くるりと背を向ける。
「おや、その手に持っているものはなんです?」
分かっているくせに、大人の癖に意地悪い。何故こんな人の為にこんなにお金をかけたのだろう。今日の為にうっかり服も買ってしまった。
「一般庶民にはこれくらいしか無理でしたけど」
どうぞ、机に紙袋を置く。座っている大道寺さんはグラスを置くと袋を手元へ引く。
「…手作りではないんですか」
「お口に合わないかと思って」
「楽しみでしたのに」
投げやりに言えばそう返され、思わず顔が熱くなる。
「どれだけのものか見て差し上げようかと考えていたんですがね」
口端を上げて嫌らしく笑う。大道寺さんはむっとして袋を引ったくろうとした私の手を引いて私を食べる。よろけてそのまま頭突き。意外と石頭だ。そのまま腕に収まる。
「いつでも食べられるものはいりませんので」
言って深く口付ける。いつものオレンジの味と、苦いチョコレート。酸欠で苦しい。お酒じゃないのに酔ったみたいだ。きっとクラクラするのはさっき頭をぶつけたせい。



throttle
(のどを絞める/窒息させる)


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