「キョウヤさん頑張って!」
倉庫内にその声が聞こえた瞬間、意識がバトルから離れた。その隙をついて相手は攻撃を仕掛け、あろうことかレオーネが吹っ飛んだ。一瞬の出来事に唖然とする俺を余所に、「キョウヤに勝った!」叫びながら走り去っていった対戦相手。徐々にわき上がる怒りの感情に、知らず舌打ちをした。
「キョウヤさん!」
タタタタと背後からの足音。溜め息も漏れた。
「なんで来たんだよ」
「えっ、と」
「あ?」
睨みをきかせて振り返る。なまえは目を泳がせて後ろ手に何かを隠した。
「…怒ってる」
「怒ってねえ」
「怒ってるよ」
「怒ってねえっつってんだろ!」
思わず怒鳴ってしまう。むくれたなまえが至近距離で四角い箱を投げつけてきて、咄嗟のことに反応出来ず角が額に当たる。
「いっ…」
ヒットしたそれはカタンと音を立てて床に転がる。綺麗な白い包みに緑のリボンがかかった小さな箱だ。いつかピンクは嫌だと言ったのを思い出した。
「あげる!」
「もっと可愛げある渡し方しろよ」
正直、可愛くてたまらない。普段試合中に動揺するような真似は絶対にしないのに、声を聞けば、姿を見れば。拾い上げてリボンを解く。上着のポケットにそれを突っ込んで箱の隅に片寄った塊を口に突っ込む。少し赤くなったなまえは黙って俺を見る。
「あめえ」
「…一応ビターにしました」
チョコレートは好きじゃない。俺は五つあったそれを全部放り込んで飲み込む。駄目だ、甘い。目を瞑って食べていれば、「…ありがとう」と小さく聞こえた。駄目だ、コイツには適わない。なまえの口にかじり付く。口直しにはもってこいだ。



loser
(敗者)


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