手を繋ぐとか、キスをするとか、その先とか、考えたりすることはある。でも私からするなんてもってのほかだし、彼が望まないのならいいと思っていた。さっぱりした付き合いだけど、優しい顔が、頭を撫でる手が、愛されてると教えてくれた。
「大丈夫か?」
だからこんなことで、こんな感情になるなんて思わなかった。嫉妬なんて、滅多にしないのに。暫く会わなかった間に、どんなに自分は脆くなったんだろう。
「おい、なまえ」
思わずダーシァンの隣から駆け出した。私が彼に走りで勝てるわけもなく、直ぐに腕を掴まれる。
「どうした?俺が何かしたのなら…」
首を横に振って、少し俯く。さっきダーシァンが手を差し伸べて、頭を撫でた小さな女の子が不安げに此方を見ていた。私も転べば、なんて考える自分が恥ずかしい。彼は私のために忙しい時間を割いてくれたというのに。こんな風に困らせるのは駄目だと分かっているのに。女の子が母親を見つけ走っていく。チラと振り返り私に笑いかけた。私、馬鹿みたいだ。
「…」
まるで分かっているかのように私の腕を掴むダーシァンの手が下へいき私の手を握る。反対の手が優しく、頭を撫でる。
「何故泣くんだ…」
「…ごめんなさい」
「謝らなくていい」
たまらず涙が出た私にダーシァンは困ったように笑い、繋いだ手を引いた。彼の胸に顔をうずめた。私があげたチョコレートの甘い匂いがする。温かくてまた泣きそうだ。



velocity of love
(愛の速度)


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テーマ「人外ファンタジー」
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