「ダーシァン」
何ヶ月だろうか、久しぶりになまえの声を聞く。寒空の下俺を連れ出した彼女は、以前と変わらず優しく笑う。微笑み返し、もう次はないのだと思い知らされる。共にいられないと分かっていながら思い切り抱き締めていた。今だけでもと思っていたはずなのに離れてしまうと酷く胸が軋んだ。
「最近どう?」
「そうだな」
言いよどんで沈黙を作る。クスクスと笑いながら彼女は話す。
「みんな元気そうだね」
先程までいたベイ林寺を恋しそうに見上げる。触れれば離れられないと感じるから、凍える指先を見つめてただ横に並んでいた。
「私は結構上手くやってるよ」
すごいでしょとでも言うように俺の顔を見、俺も意志が固い目を見つめ返す。
「もう、戻ってこないから」
「…ああ」
お互いに言葉を言いたげに口を開き、閉じる。彼女は腕を伸ばしかけ、途中で引く。どうすればその腕を掴めたかなんて、検討もつかない。
「じゃあ、ここで」
笑って踵を返す彼女。
「なまえ」
名前を呟くと一瞬動きが止まり、少しだけ、悲しそうな笑顔を見せた。じゃあねという言葉は白くて柔らかく溶けた。



もう一度キスしたかったforロニィさん

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