息を整えながら、現れた男は余裕そうな表情を見せて続ける。
「それに、女の子口説くのにこんな場所じゃ、ねえ…」
軽く馬鹿にしたように辺りを見渡す様子にいらっとすると同時に、抱きつかれた。目前の黒い男に。チャウシンは肩越しに見える。
「おま…っ」
「だ、ダーシァン!?」
「なまえ、言うなと…」
「あ」
動揺して正体をバラしてしまった。がっしりした腕が腰に回っていて、その体温に心臓がバクバクと跳ねる。演出にしては強く抱きしめすぎじゃない?
「ダーシァン?…まじで?」
誰だか分かると、明らかに焦った様子だ。チャウシンはそんな奴だっただろうか。今朝も女の子といちゃついていたくせに。イライラして私もダーシァンに抱きついた。
「おい、おーいなまえ、何抱きついちゃってんだよ」
チャウシンが若干慌てたように近寄ってくる。なんだか濡れてる?息切れしていたし、走って来たのだろうか。勘違いだろうが、考えるほど嬉しくなる。けど、にやけてる場合ではなくて。ダーシァンの気持ちがなんとなく伝わってきた。
「とりあえずこの場所バカにしたこと謝ってよ」
「は?なんで?」
「チャウシン…っ」
「いい、大丈夫だ」
逞しい腕は肩越しに男を睨む私を解放して、もう一度優しく頭を撫でた。マントを取り払うとチャウシンに向き直る。
「勝負しろ」

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