雨は止んだ。私は黒尽くめのダーシァンについてベイ林寺入り口の方へ歩いていた。
「ここでいいか」
周辺一帯を見渡すと、ここの偉大さを実感する。歴史は重い。ダーシァンの横顔は少し険しくて、彼もそれを感じているのかと思った。
「ダーシァン、」
「…暑いな」
マントをぱたぱたと扇ぐようにするダーシァンに脱力。多分これは本心を隠す為だろうが、そんな気遣いに笑みがこぼれた。
「きれいな景色…」
「ああ」
少しの沈黙が流れる。
「ここまでしているんだ。来なかったら承知しない」
ダーシァンの手が私の頭に置かれる。大きくて安心できる。
「なんとなく、作戦は分かったんだけどさ。なんでそこまで…」
「あいつには、ベイに真面目に取り組んでほしい」
真剣な目で私に言う。本気でやらずともああまでこなせるのだ、才能がないとは言えない、修行を積めば更に強くなれる、と。私もそう思う。
「でも私じゃ囮にならないんじゃ…」
ダーシァンは軽く笑う。なんだって言うのさ。
「みんななまえが好きだ。協力したい」
「!?私の気持ち知って…」
頭上に置かれたままの手。私はまさか気持ちがバレているとは知らず、驚いて顔を見上げる。思ったよりもダーシァンの顔は近くて…
「はいはい、そこの、ダサいマントファッション、」
入り口から、途切れ途切れの聞き慣れた声がした。

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