その当時私は何故だかチャウシンを信頼しきっていた。修行だー!なんて飛び出して山奥で隠れんぼなんかして。二人なのに飽きることなく遊んでいたら、何時の間にか日は沈みかけていた。「チャウシーン…」子供すぎて、ただ相手を困らせて吃驚させるのに必死で、こんな深くまで来たつもりはなかった。あたりは鬱蒼とした竹林ばかりで、葉の擦れる音と鴉の鳴き声だけが響いていた。ぼーっとしていても何かが起きる筈もなく、だんだん視界も悪くなる。プライドが高いチャウシンならすぐに見つけてくれると思っていた。「どこ…?」どちらかと言えば負けん気な私は外で泣いたことなんかなかったけれど、この時ばかりは耐えられなかった。弾けたように泣き出した。近くの、遠くの山に木霊して一層怖い。チャウシンは来ない。暗闇になって、私は泣き疲れて寝てしまった。「なまえちゃんー?」遠くで呼ぶ声がした。意識が戻ると家の中だった。横で「死んじゃったあああ」と喚き声が聞こえて。むくりと起き上がるとぴーぴー泣いているチャウシンが抱きついてきた。「暑いよー離してよ」「なまえちゃあああん」馬鹿みたいに泣くそいつを引っ剥がす。濡れた顔はぐちゃぐちゃだった。「変な顔っ」対して私はけらけらと笑った。「最悪!」あははと絶えない笑い声を上げているとチャウシンは出ていった。そのドアから大人が入ってきた。「なまえ、大丈夫?」「うん」「良かったわ。チャウシンが血相変えて走ってきた時には本当に焦ったのよ」「…チャウシンが?」私はチャウシンの調子のいい笑顔くらいしか知らない。だからさっきも馬鹿みたいだなって笑った。「どこ?」私はその大人に付いてチャウシンを探しにいくと、三個先の部屋で寝ていた。「この子、ずっと起きていたから、疲れたのね」私は泣きぼくろを触ってみた。実は泣き虫なのかもと思った。もっといろんな顔が見たい。
「なまえ、なに笑ってるね?」
「ん、あ、思い出し笑い!」
メイメイに指摘されて笑みが零れていたことに気づいた。私たちはいい意味でも違う意味でも大人になったんだなあと感じた。

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