「チーユンは乗り気ではないのだ」
「うん、もう分かったよ」
敷地内を移動する間、永遠それを繰り返した。どれだけ不本意なんだろう。というか、真犯人の意図はなんなのだろう。広場に抜けると沢山の坊主頭が目に入る。その奥の建物の陰に佇んでいる白い服を纏った男はまた友人である。
「ダーシァン!」
恐らく真犯人であろう人物に駆け寄る。なにしろこの人は私が知る限り少し…変わっていると思う。
「ああ、おはよう」
「いや、おはようじゃなくて私をさらった理由を答えてください」
「?…何故分かった」
ダーシァンもチーユンと一緒で、変に素直というか。それがみんなのいい所でもあるけど。私が剣幕で圧すと、ダーシァンは「止め!」と声を張り上げ私について来いと言った。心なしか楽しそうに見えるのがまた不快である。チーユンはまだブツブツ言っている。
「いきなりすまなかったな」
ダーシァンは半歩前を歩きながら切り出す。
「どうせ来る途中だったからいいけど。でもなんで普通にもてなすのにあそこで捕まる必要があったのか謎だよ」
「目撃情報を流してもらう必要がある。演出だ」
「はい?」
「だからチーユンは嫌だと言った!女を無闇に乱暴に扱うなど…」
「だがお前も戦ってみたいとは思っているだろう?」
「う、それとこれとは違う!」
少し後ろを歩いていたチーユンは半ば叫ぶように言うと憤慨したように来た通りを帰って行った。私は揺れるお下げを目で追っていたが、気にせず先へ行くダーシァンに小走りで横へ戻った。
「だからなんの話?」
空は高く澄んでいて、燕が一羽、低く飛んだ。

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