「あの子はなんなのよ!」
玄関を出ると朝だというのに騒がしい口論が聞こえた。
「だーかーら、ただの友達だって。ただ友。」
「じゃああの態度はなによ!」
「だからさあ、…あ、なまえ」
呼ばれて視線だけそちらに向ける。もうずっと前から隣に住んでるチャウシンは、ここ数年色んな女の子と遊んでいてこんな状況には慣れたけれど、こういう時に話しかけてほしくない。
「この子はなに?チャウシン」
「ん?幼なじみ。なまえどこ行くんだよ?」
「関係ないじゃん」
「んだよ、可愛くないな」
「そうだねじゃあね」
私は無実の罪で無駄に女の子に叩かれたくないのでとっととおさらばする。私が好きならキスしてよ!と女の子が喚くのが背後から聞こえた。生憎、人のキスシーンを見るような趣味はないのでそのままベイ林寺への道へ乗った。
幼なじみ。なんの縁だか知らないけれど小さい時からの付き合いで、気付いたら今日までこんな風に言い合ってきた。チャウシンはちょっと顔がいいからって昔からモテて、私だってそれなりに恋愛だってした。お互いに長続きしないけど。それはお互いのせいだと自覚しているし、もう今更古い縁を切るのは難しいというもので、諦めてもいた。今朝みたいに揉めているところに出会したら、基本的に敵に回され、上手く行かなくなって、結局破局。仕方ない。それでも私はそんな状況を嫌だと思わなかったのは、付き合ってきた元彼とかにあまり思い入れがなかったからだと分かっている。もうずっと前から自分の気持ちに気付いている。
「…チャウシン」
ぽつり、呟いた。溜め息も零れた。色々考えていたらベイ林寺が聳えるのが視界に入った。もう近くまで来ていたんだ。みんなに会えば元気になる。駆け出そうとしたら後ろに気配を感じて振り返…
「御免!」
世界は暗転した。

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テーマ「人外ファンタジー」
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