「…泣くなって」
彼女に伸ばしかけた手を、触れる前に引っ込める。泣いている女の子なんて今までそうしてきたように抱きしめでもすればいいものを。俺は何故できない?打ち付ける雨になまえもグショグショで、そんな姿を愛しいと思うと同時に風邪を引くんではないかと心配になる。他の女の子なら服が張り付いてエロいなくらいしか思わないだろう。モテることを自覚して遊んでいるうちに、なまえも彼氏ができていて。昔から一緒にいるからなんとも思っちゃいなかったが可愛いからそれは自然だと考えれば分かることだ。離れていく。また走っても見つけられなくなる。そう感じた時期からもう間違ってたんだ。身に付けた知識で嫉妬でもさせりゃ気付いてこっちに戻ってくるんじゃないかと違う女の子と付き合って。そんなことで俺に私はとすがってくるようなやつではないと分かっていたはずなのに。
「風邪、引くぞ」
引っ込めた手は伸ばせずにただそう呟く。今日、なまえがいないと聞いて必死になった。もちろん朝の煩い子には他の女を追うなんてと振られた。むしろ都合がいい。なまえを見つけたい。あの時自分で見つけられなかったものに、やっと辿り着けるんじゃないかと。
「なあ、なまえ、」
ずっと前から好きだった。

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テーマ「人外ファンタジー」
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