「追いかけないの?」
雨の音だけになったそこに、メイメイの声が鳴った。
「でも…」
「行け」
私の言葉を遮ってダーシァンが言い、ふっと笑った。
「俺達の頑張りを無駄にする気か?」
私は口を噤む。結局チャウシンと本気で戦うことは出来ず終いだが、結果的に私の方には良くも悪くもまたとないチャンスである。追いかけなければ話しにくくなるだろう。追いかけても駄目になるかもしれない。それなら。
「ごめん…っ!」
門をくぐる。今更傘を差すのも無駄だと思ったので思い切り腕を振って。私の為に嫌な気分にしてしまった。チャウシンの真意は分からないけれど、何かある。それは感じた。雨で滑る下り坂に何度目か足を取られそうになったとき、その後ろ姿を見つけた。
「チャウシン…っ」
「あ?」
至極不機嫌に振り返った彼は私を見て驚いたようだ。私も私で、その覇気のない彼の様子に驚く。自分の風貌に気にかけるチャウシンが、ぐっしょり濡れるのも厭わず重たい足取りで歩いているなんて。
「…あの、」
「…水も滴るいい男っしょ?」
へらりと笑ってみせる。誤魔化しというか、彼なりの場の雰囲気の緩和なのだろうが、今はそういうのはいらなくて。
「なんで、」
「ん?」
「…なんで好きとか言うの」
そのせいで感情が先走る。チャウシンはまた怖い顔をした。

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