「なまえ、大道寺先生来てる」
「まじで?」
しかし嘘ではなかった。教室のドアを見やれば確かに先生がいた。今日は授業ないはずだけどな。私に会いに来たとか?そんなことはないか。顔見れてラッキーだなあなんて考えていたら、再度友達が私に言う。
「なまえに用事ってよ?」
「それは嘘だあ!」
絶対私をからかってるんだ。そう思って先生の方を見れば、目が合って、手招きされた。私はすぐさまドアへ向かった。
「先生!」
「なんですか、その笑顔は」
呼び出されて不安にならないところが貴女らしいですね。最近は嫌味さえも嬉しくなってきた。緩んだ頬をどうにかしないとと必死になっていたら、目の前にノートが現れた。
「みょうじさん、貴女のでしょう?昨日落ちてました」
先生が私に向かって突き出していた。
「そうです!でも明日の授業の時で良かったんですよ?ありがとうございます」
わざわざ届けに来てくれたことが嬉しくて、緩む頬を戻すのは諦めた。するとお礼を言ったのに何故か憐れむような表情になった大道寺先生。やれやれと肩を竦められ、
「テスト一週間前になりましたから、必要だろうと思いまして。…そんなことはなかったようですねえ」

「そうなんですか!?」
盛大な溜め息が聞こえた。



「終わ…ったー!」
「違う意味でな」
「違う意味じゃないよ!」
隣の席のキョウヤくんが笑う。なんとか無事にすべてのテストが終わった。大道寺先生に誉めてもらうべく、気付かされた一週間前から数学を必死になって勉強した結果、かなり手応えがあった。
「自己最高の点数のはず…」
私が一人で自分自身にうなずいてたら、キョウヤくんはつまらなそうに帰る支度を始めた。
「なまえ、どっかでご飯食べて帰らない?」
「あー…ごめん、ちょっと先生に用事が」
「そっかあ、分かった」
私がお熱だということはだいぶみんなに知り渡り(というか丸分かり)、頑張ってねーなんて言葉を残して帰って行った。今から先生もお昼ご飯かな、とりあえず急がなきゃ。急いだ結果教室を出る前にキョウヤくんが言った台詞が聞き取れなかった。

なんで先生なんだよ。

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