「大道寺先生のとこ行くって…チャレンジャーだね、なまえ」
「嫌味っぽいあの先生のどこがいい訳?」
「なんか裏があるよ絶対。大人に騙されるななまえちゃん」
…案の定、あまり良いとは思われなかった。私は適当に受け流して帰って行く友達と別れた。日直をやってからだいぶ経ったけれど、なんら変化がない。こうなったら突撃するしかないと思った。

「ここだよね」
大道寺先生は大抵の時間は準備室に居ると噂で聞いた。放課後になった今の時間も、多分ここに居るはずだ。私は軽くノックをした。
「先生、みょうじですけどー…」
…返事がない。おかしいな、居ると思ったのに。
「失礼しまーす…」
そーっと戸を開けた。バレたらまた嫌味を言われるに違いない。しかしやはり返事はなかった。私は部屋に入ると、後ろ手に戸を閉めた。先生は綺麗に片づけられた机に突っ伏していた。そうっと近づくと寝息が聞こえた。どうやら寝ているようだ。「せんせー?」…起きない。寝顔見てみたいなあ。暫く眺めていたら、机に小さな植木鉢があることに気付いた。
「サボテン?」
植物育てるとか、可愛いところあるんだ、なんて思いながら手を伸ばして触れ
「何をやっているんです?貴女は」
られなかった。それどころか、吃驚しすぎて持ってきた教科書とノートを落とした。
「起きてたんですか?!」
「今起きました。大事なものですから、触らないでくださいね?」
そう言うと先生はサボテンの鉢を戸棚に移した。声をかけても起きないくせに。そんなに大事なんだ。
「何故ここに居るんです?」
あまり顔を見ないうちに、大道寺先生は眼鏡をかけ直していた。
「数学を、」
「ああ、そんなことも言っていましたね」
眠そうに答えると先生はコーヒーを入れ始めた。髪をかきあげて、私の教科書を拾った。
「どこが分からないんですか?」
その一連の動作にうっかり見とれてしまった。
「みょうじさん?」
「わ、忘れました失礼しました!」
一気に言って教科書引ったくって準備室を飛び出た。顔が熱くなったのが分かった。初めて、名前も呼んでくれた。(苗字だけど!)



ニヤニヤが止まらないよ、先生。

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