「持ちます!」
私は手を差し出した。呆れたような大道寺先生は溜め息をついた。
「毎回毎回、なんなんですか貴女は」
「今日は日直ですから!」
私は数学の授業が終わると先生に声をかけるのが恒例化した。仕方ないとばかりに再度溜め息をついた先生は私にプリントの束を渡した。ありがとうございますと笑った私を変なものを見るような目で先生は見る。うわ、なんか恥ずかしい。そんなことを思いつつ、教室を出ると私は先生の横に並んで歩いた。
「貴女は、どの授業でもそんなに張り切っているのですか?」
不意に先生が話し出した。
「え、いや、数学だけです」
「その割には全然理解していないようですが」
ギクリ。なにせ数学は一番苦手な教科で、さらに去年までは優しいおじいちゃん先生だったからずっと寝ていたのだ。私が顔を反らすと先生は馬鹿にしたように鼻で笑った。
それにしても。私は新学期が始まってから毎日のように話しかけているのに変化がないこの人はなんなのだ。少しくらい気にしてくれてもいいものを。私が馬鹿だって分かったんなら放課後教えてくれるとか…。…それだ。
「じゃあ先生、今度放課後教えてください」
笑顔で言った私に、大道寺先生は三度目の溜め息。
「諦めてはいないんですね」
「うわ、酷いですよ先生」
むーっと拗ねると先生はさっきとは違い楽しそうに笑った。絶対こっちの方がいいのに。いつの間にか数学準備室に着いていた。
「ではありがとうございました、日直さん」
私からプリントを取り上げると、先生は部屋に入ってしまった。放課後の件に返事くれてない。名前も苗字さえ呼んでくれない。でも、めげないのが私。



まだ時間はあるよね、先生。

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