「もしもし」
『デートしましょう!』
「またですか…」
頭と肩で携帯を固定しつつ書類を整理する。かれこれ十数回だろうか。
『またですかじゃないですよ!全くいつまで彼女をほったらかしとくんですか!』
「彼女とは誰です」
『私です!』
「あまりしつこい人は嫌われますよ」
『…』
ハッハッハと笑うと前よりよく笑いますねと言われた。まあそうでしょう。
「貴女の反応が実に面白いもので」
そんな理由で何度も誘いを断っている。こちらが嫌われるぞと言われればそうかもしれないが、そんなことはないと確信している辺り、つくづく彼女に対する想いに自分で笑えてくる。始業式に変にはしゃぐ姿を見てやはり学生はと嘲笑った彼女がまさか、と。私自身性格を分かっているつもりで、人に好かれる質ではないと自覚しているが、彼女は何故かついてくる。興味が湧き次第に惹かれていた。不思議なことに。それすら面白いと感じる。考えてまた笑うと嫌そうな声で「うわあ」と言われた。
『ところでサボテン育てるの面倒なんですけど、なんでくれたんですか』
「ああ、貴女に似ているでしょう?」
『はい?』
「触れたくても触れられない」
『は…』
「眺めることしかできないなんて…!」
返答の代わりにゴトンと携帯を落とした音がした。分かって言っているがこれで恥ずかしがる彼女も大概変わり者だ。私に惹かれた時点で分かりきったことではあるが。
「今からお迎えに行きますからね」
聞こえていないだろうがそう言って通話を絶った。驚く姿を見たいと同時に、喜ぶ顔が見たいと思った自分に自嘲した。

今から行きますよ、なまえさん。



end

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -