数秒差だけどキョウヤくんが先約だし、部活もあるだろうし、と帰りのホームルームの後で空き教室に来たのだが、この展開は何だろうか。立てた緑の髪が頬をくすぐって、腰に手が回されて、「好きだ」と呟かれたのは。
「え…と、キョウヤくん、えーとだね…」
ギュウと腕の力が強まって、心身共にこれは結構辛かった。呼び出されて気付かないほど私も鈍くないし、勿論断るつもりで来たのだけれど。
「あんなオッサン止めろよ」
「…キ「おや、学校でお熱いですね」
私は驚いた。それはもう、漫画みたいに心臓が飛び出すんじゃないかってくらい驚いた。
「あ?関係ねえだろ」
さらに力を増す腕に、心臓が爆発するんじゃないかと思った。キョウヤくんが大道寺先生と対面してる訳だから、私は背中を向けている訳で。顔が見たい反面、恐ろしくて見たくないなとも思う。
「顧問の先生がお呼びですが」
先生の言葉に、舌打ちをして私を離した。良かった、一応心臓は無事だった。
「なまえ、帰り、校門で待ってろ」
「あ、うん」
睨みつけてキョウヤくんが出て行った。そして目が合う。先生はそれはもう最悪な笑顔で、
「盾神くんと一緒に帰るんですか」
「ちが…っ、や、そうじゃ、えー、と」
「構いませんよ、生徒の恋路を邪魔するなんてしませんから」
「…先生私の気持ち知ってて言ってるんですか?」
「貴女こそ、私の気持ちを知っていて言っているんですか?」
詰め寄っていた距離がピタリと止まる。もう先生は笑っていなかった。私返事もらったっけ?もらってないから困ってたんじゃないか。分からなくて先生の目が怖くて話せないでいると、不意に溜め息を漏らされた。
「やっぱり…」
「?」
呆れたように首を振る大道寺先生。
「馬鹿ですね」
「えっ、なにがなんだか…」
ドアを開ける先生について私も教室を出る。いつもの先生みたいで、ほっとした。
「ヤキモチ?」
また思いっ切りドアに挟まれた。

知らないです、先生。

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