あの時思わず飛び出したものの、あれはつまり、先生も私のことが好きだということにしていいのだろうか。都合良く勘違いしていいのだろうか。
「遊ばれてんだろーが」
「ぶち壊し!」
「知るか」
黒板の前の紫のスーツ姿に見とれていると横から声がかかる。数学の時間だけ一番前の席になりたいが、生憎一番後ろである。まあ、他の授業は出来れば当たりたくないからラッキーではある。
「先生は誠実だよ…うん…たぶんだけどね」
「有り得ねえ」
ぶすっとしたキョウヤくんも頬杖をつき前を向く。大道寺先生は話しているのに気付いたのかこちらを向いて、嫌な笑みを浮かべた。当たる…
「盾神君、この問題の答えを」
「…分かりません」
「おや、基本なんですがね」
てっきり私が当てられると思ったので内心ほっとしつつ、キョウヤくんを横目で見る。あからさまに嫌悪感丸出しの顔でポケットに手を突っ込む。かっこいい、と、どこかから聞こえた。別に先生に比べたら大したことないのにとか盲目なこと考えながらキョウヤくんを見ていたら目が合って、そらされて。こんなんばっかだななんて思っていたら「みょうじさん」と大好きな人が私を呼び、びくりと体が跳ねた。
「解けますよね?」
「あ、えー…と、すみません」
心なしかいつもより笑顔が恐ろしい。キスされて初めて話すなんてどうしていいか分からない。(告白した時も同じようなこと言ってた気がするけど。)私は視線に耐えられず目を背ける。真横から丸めた紙が飛んできて顔面に直撃。投げた本人はそっぽを向いていて、中に書かれた言葉は…
「では、日直さんはプリントがあるので放課後取りに来てください」
チャイムが授業の終わりを告げる。日直は、私である。

わざとですか、先生。

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