風がそよいで、若々しい黄緑色を揺らす。

木漏れ日がたわむれて遊んでる。

気持ちよくて、思わず伸びをしたら、

あなたと目が合って、

ほほえみかけられた。

よく慣れた、よく見るとほほえんでいると分かる、ニアの笑顔。

わたしも思わず笑みをこぼしたけれど

わたしの笑顔はどこかぎこちなかった。

あなたが、そう、ほほえみをくれて

こんなに穏やかな時間が過ごせるのは、

今日を最後にもう会えないことが

あなたには大して響いていないから。

「きれいな髪ですね」

あなたはわたしの黒い髪を撫でた。わたしの気持ちも知らないで。

「切らないでくださいよ」

「わかんないわ、そんなこと」

「ユメは長いほうが似合ってます、絶対に」

そんなことを言われたら、未練を断つために髪を切るという儀式をし損ねてしまうではないか。

あなたはわたしの髪をさらさらともてあそんでいた。

その手ですかれ春の光に透かされた黒髪はわたし自身にも確かに美しく見えて、

「ニアと会えない場所で美しくいても意味なんかない」

と、気づいたときにはもうわたしは思わず口に出していた。

するとあなたは、わたしをまじまじと見つめたあと、

「じゃあ、一緒に来ますか?」

と言ったのだ。

混乱したわたしの心のなかを、喜びと不安が行き交った。

そのようすはまるで揺れる木漏れ日みたいだった。





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