わたしは朝別れてからずっと待ち望んでいた、息をつぐ暇もないくらいのキスをしていた。

 ようやく離れた唇と唇を、まざりあった体液が結んでいる。

 「苦しいよ、エル」

 わたしは口を拭って何度も言った。

 「もっと、もっと苦しめて」

 「うるさい」とエルは言って、わたしの口を骨ばった手で押さえた。「言われるまでもなく、壊してしまうつもりですから、そのつもりで」

 わたしは肯定も否定もせず、エルの指にかみついた。エルの声が漏れる。わたしは背筋がゾクゾクした。そう、もうとっくに壊れてる。とうに狂ってる。

 「もっと苦しめて黙らせてよ」とわたしは言った。「これ以上なにも望むことができないくらいに」

 酸欠するのではないかという激しいキスを交わしている最中、わたしはうっすらと目を開けながら、ガラスの向こうの暮れていく空を眺めた。散々お預けを食らった挙句、一日の終わりに、意識の終わりを迎える。なんて素敵な一日の過ごし方。


素敵な一日の終わり
2016.9.28






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