ニアが目の前に差し出した棒アイスを、わたしはせっせと舐めあげている。

 暑い暑い、と言いながら急いで食べる。急いで食べると髪が乱れる。乱れた髪を耳にかけながら急いで食べる。

 どんどん溶けていくアイスと、夢中になって食べるわたしのようすを、ニアは見下ろしている。餌付けか何かの時間とでも思って、悠然と構えているようにも見える。

 そこで思わず目があったので、わたしはふっと笑みをニアに向けた。ニアは怪訝そうに目を細めて、ずいぶんおいしそうに食べますね、そんなにおいしいですか、と言った。

 わたしはこくりとうなずいて、懸命にアイスを舐めつづけた。

 けなげなくらいですね、とニアが言ったのも、わたしの耳には入ったけれどしかしすぐに通過していくのだった。


溶ける、溶ける
2016.9.13






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