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もうすぐ期末テスト。そんなことは何週間も前に分かっていた。生徒手帳に予定は書いてあるし、事前に配られるプリントでも見てるし、それに周りがそういう雰囲気にいつの間にかなっている。だから2週間前から勉強しようと思っていた。否、それが今までの習慣だった。
なのにどうして!


「私3日前なのに何一つ、勉強してないよおおおおお!!」
「あっそ」
「酷いユウキ!もっと何か言葉をかけて!」
「頑張れ」
「嬉しい言葉ありがとう!でも顔が笑ってる!めっちゃ楽しそう!」
「せいぜい苦しめバーカ」
「だから酷いんだってそれが!」


だからもっと優しい言葉を書けてくれたって良いじゃないですか。だって私たち、そういう関係だよ。そういう、っていうのはそういうのだけど。なのに酷いよね彼氏のくせに。あ。言っちゃった。隠すつもりもないんだけど。


「そりゃユウキには関係ないと思うけどね。学校違うし」
「そうそう。俺は丁度一昨日終わったんだ」
「出来たの?」
「まぁ一応勉強したしな」
「くっそ、何でだろ。何で私今回こんなにも勉強してないんだろ!」


悩めば悩むほど、答えが出てこない、なんていう訳じゃない。原因は分かってる。要するに、いつもはテストの期間が一緒、ということなんだ。

他校で違っても、期間が一緒なら、勉強しようと思えたし。どうせ一緒なら、一緒に勉強しようと言うことにもなったのに。だが今は私が調子に乗って、勉強するの忘れてた。バカみたい。

ユウキはやっと5日間という長い期末テストが終わったんだ。今更一緒に勉強してなんて、言えない!いつもなら苦手の数学を教えてもらいたいのだが、頼みにくい。まぁ原因は自分だとはっきりしているのだから、やるしかない。仕方ない。


「じゃあ私帰って勉強する」
「え。今から?」
「しないよりましじゃん?とにかく、頑張るしかない」
「………」
「じゃあまた明日ね。バイバイ!」


そう言い、自分の家に向かって歩き出す。すると、携帯がいきなり鳴り出した。予想は付く。どうせハルカちゃんからだ英語のテスト範囲、どこだっけー?なんていう内容。
テストが近づいてくると良く聞いてくる。全然良いけど。


「もしもし?」
『名前?俺だけど」
「はい?ユウキ?何で電話してきてるの?あんた私の後ろにいるでしょ」
『うん』
「うんって…」
『面と言えない気がしたから、電話で」
「はぁ?」


言いたいことズバズバと言ってのけるユウキが、面と言えない気がしただと?そんな物珍しいこともあるもんだと思う。神様に何か感謝したくなった。


「どうしたの?」
『いやどうもしない』
「マジで大丈夫ですか。壊れたの?」
『いや、そんなこともない』
「じゃあ何?」
『テスト、頑張れよ』


その言葉に感じた温かさは、さっき言われた言葉より優しかった。やっぱ今度からは一緒に勉強しよう。そのときに、苦手な数学も教えてもらう。それで終わったら、何処か行こうかな。

翌日メールでそのことを伝えれば、『バカ言うな。テストを先ず終わらせろ』とはっきり言われた。もちろん正論だから何も言わないが。もうちょっと優しく、「あぁそうだな」とか返信してくれはないのかな。


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