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「ハガネール、アイアンテール!」
「…ウインディ、避けてかえんほうしゃ」


淡々とウインディに的確な指示を出し、私のハガネールをどんどん追いつめていく。これで何度目のバトルだろう。もう、数えるのも面倒臭くなるくらい。戦った。それも、他人から見れば馬鹿げた理由を掲げて。

それでも、私にはとっても大切なことだよ。人に好きって伝えるぐらい。っていうか、そのものだけど。
受け入れて欲しければ、私とバトルして勝って見せてよ。
それが、マイの出した私への挑戦状であり、問題だった。
私はそれに、なんと答えるべきなのか。そんなもの、選択肢なんて1つしかない。

マイが好き。これは、誰になんと言われようと、関係ない。
女同士だとか、不純だとか、でも好きな気持ちに女も不純も関係ないよ。いや、関係ないと願っている。

だって、そうじゃないと、私が今バトルしてる意味がない。
私は、マイが好きだから戦うの。
だけど――


「ハガネール!!」
「…戦闘不能。また、私の勝ち」


何回目かも分からないバトルに、私はまた負けた。もう、数え切れないぐらい負けてるから、この雰囲気には慣れている。だけど、やっぱり悔しいよ。
するとマイが私に近寄ってきた。顔が少し怒ってる。どうしたの。


「…名前、わざとなの?」
「え」
「…私が使うのはいつも炎タイプのウインディ。でも、名前はいつも、ハガネール。勝てるわけ、ないじゃん。手、抜いてるの?」
「そ、そんな訳っ!」
「…名前、約束は守ってくれないの?」


ふと出た「約束」という言葉に、私はハッとした。それは確かに、私がマイに告白したときにした約束。
受け入れて欲しければ、私とバトルして勝って見せてよ。その言葉を返すように、私はマイに約束した。
絶対、マイに勝つから。約束する。

だけど、今そんな約束がまるでなかったように、私はマイに負ける続けている。ちょっと情けないんじゃないのか私。
マイに約束も守れない奴、なんて思われたくないよ。
好きだから約束を守れるように努力していたつもりなのに、マイを、不安にさせてしまっていた。


「ごめんマイ。私が、悪かったよ」
「…え、」
「だから、もう1回チャンスをちょうだい。今度は私、ハガネールでマイのウインディに勝ってみせる。絶対」
「…そんな、の」
「やってみせるよ。だから、もう一度約束しよう」
「…バカ」


それは自分にとって不利な約束。そして、道筋を狭くさせるような約束だった。
それでも、自分で言って、自分で交わした約束だから、今度こそ頑張るよ。

最後のマイの一言は小さく消えていった。俯いて、少しだけ笑って、もう1度約束を交わして――、今度こそ、絶対に負けない。勝ってみせる。
その先の未来、受け容れてもらえることを望みながら。


もう一度約束しよう
(そしてもう一度、好きと伝えたい)



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