txt | ナノ

「ねぇユウキ。眠たい」
「寝ればいいだろ」
「ユウキも一緒に寝ようよ」
「俺眠たくねぇし」
「乗れよ!」
「黙れよ!」


ソファに寝転がる幼馴染みは、いきなり我が侭を言ってきた。
眠たい、なんて。だったら寝ればいいだけの話。俺には関係ないのに。どうして一緒に寝ようなんてことになるんだ。
それに、今寝るなんて馬鹿げてる。今の時間、8時だぞ。


「お前今寝たら、夜寝れなくなるじゃん」
「今日は一緒に星を見に行くって約束してるでしょ?眠くならないように、今寝るの。だけど寝れない。分かった?」
「全然分かんない。星見に行くなんて、聞いてないんですけど」
「今言った」
「そういう問題じゃねぇって」


未だ納得しきれない俺を宥めるかのように、名前は理由を話し出した。
それが、どうしても流れ星を見たいとのこと。
瞬間、こいつはバカだと思った。流れ星なんて、宇宙の塵だろ?要するに、ゴミじゃないか。それを見たがるなんてどうかしてる。そりゃ小さい頃俺も流れ星を見てみたいなんて思ったけど、いざこの年になってみれば、そこまですることが面倒臭い。故に行きたくない。


「それさ、何時の話」
「10時くらいの話」
「普段のお前普通に10時くらいまで起きてるだろ。全然問題ないって」
「そっかぁ…でもユウキ一緒に来てくれるんでしょう?」
「いや俺は――」
「時間聞いたってことは、その時間に用事入れないようにしてくれるってことでしょう?」


別にそういう意味で言ったつもりはないのに、名前に変な解釈をされてしまう。面倒臭い、というのが本音だけど、あとでグチグチ言われる方がもっと面倒臭い。知らないうちに俺は了解したことになっていて、こいつの強引さを恐ろしく感じた。





その夜、予定の10時頃俺たちはミシロタウンの近くの草むらにいた。星を見るのには光の少ない場所がよくて、でも遠くには行きたくないって言うのが理由らしい。よく分からないけど。


「見てよ!すっごくきれいじゃない?」
「でもお前が見たいのは流れ星だろ」
「んーまぁこの際それはどうでもよかったりするんだけどね」
「え?」


何気なく呟かれた名前の言葉が気になって、もう1度聞いてみようと思えば突然名前が声を上げた。「流れ星だ!」と。
こんな運良く現れるモノなんだとは思わなかったけど、一瞬だけ見ることのできた流れ星は、確かにきれいだった。


「でもすげぇじゃん。見れたな流れ星」
「うんっ」
「んで、何か願い事でもしたのか?」
「あ、してない…忘れた」
「バカかお前」


流れ星が見えたとき、黙り込んでいたから、その間に流れ星に願い出もしていたかと思ったのに。やっぱり肝心なところで抜けてるなぁ。
だけど名前は笑っていた。とても、明るい笑顔で。
流れ星が見えたからだろうと無理矢理納得して、俺は一言「帰ろうぜ」と声をかけると――。


「きっと今日流れ星が見えたのは、ユウキが一緒に来てくれたからだよ!」


あまりにも突拍子のない一言だったけど、嬉しいと思えた自分がいた。
だったら流れ星を見て少し感動したのはきっと、名前のおかげだろうな。


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -