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窓を開ければ、季節に似合わない冷たい風が入り込んできた。それを感じると彼は少しだけ怪訝そうな顔をして「名前、窓を閉めてください」と言う。だが私は言われてはいそうですねと簡単に従うような人間じゃない。意図的にそれを無視し、更に窓を大きく開ける。
すると彼は立ち上がった。


「あなたは何がしたいんですか」
「空気の入れ替えです」


本当は嘘だ。この季節に空気の入れ替えなんて必要ない。正直ランスさんの言う「寒いから閉めなさい」という意見には賛成。私だって寒いのは嫌いなんだから。
だけど、どうしても開けたかった。風を肌で感じたかった。
それでもやっぱりランスさんは気に入らないようで、窓をさっさと閉めてしまった。ガラス越しに映る風景を目にして、どうして何も思わないのか。この部屋で静かにしてることが、今私たちがすることなのか。


「ランスさん」
「何ですか」
「…好きです」
「知ってます」
「なら、窓開けてもいいですか」
「それとこれとは違います」


交わされてしまった。相変わらず何事にも冷静に淡々と答える口調は変わってない。仕方ない、多分私の中では当の昔に諦めがついてるんだと思う。
だから窓からを手を放し、窓辺から離れて、ランスさんの横に座った。
彼は少しだけ動作を止めて、何事もなかったかのように再開する。…追い返すことはしない。ただ黙って、受け容れている。
それが嬉しくて、さっきまでの我が侭な自分を消したいなんて思えてならなかった。
夏はもう、終わりました。


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