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教会から聞こえてくる鐘の音を聞くたび、私の心を覆うのは「もう無理かもしれない」という感情だった。教会から見える白いウエディングドレスを着た花嫁を見るたびに、「もうダメかもしれない」と思えた。どうして仕事へ行く道の途中に教会が位置しているんだろう。毎回、そう悩んだ。

プロポーズされて、それを承諾して、あれからどのくらい月日が経ったのだろう。あの頃まだ幼かったのだろうか。お互いにもうちょっと大人になってから、なんてバカみたいな約束交わさなければ、こんなに苦しまずにすんだのかな。私はずっとあなたと一緒になりたいと思っても、あなたはどんどん先に行ってしまう。仕事先で昇格したり、私だってあなたがそうなれば嬉しいけど、それって私との結婚の道、狭くしてません?何度も言いたくて耐えた言葉を心の奥にそっとしまい込み、今日も私は仕事へ向かう。意地張って、私は何が楽しいんだか。

明日は彼とのデートじゃないですか。久しぶりに会えるじゃないですか。もっと気持ちを明るくしないと、変に心配させちゃう。それだけは、避けたいの。







「久しぶりやな名前」
「久しぶり、マサキ君。元気だった?」
「わいは元気やけど…名前は何かあったんか」
「え、どうして」
「目に隈できとる」


なんてことだ。確かに昨日夜遅かったかもしれないけど、折角会えたのに、く、隈なんて…笑えないじゃない!恥ずかしくて顔を覆うけど、やっぱりマサキ君は笑ってた。だから嫌だったんだけど。
だけど、不意に頭に手をぽんと置かれ、そっと撫でられる。大丈夫やちょっとだけやし、気にせんでええ。ほな行くで。って、そんなこと言われたら、私、安心しちゃうよ。


「マサキ君仕事の方どうなの」
「順調。名前は?」
「…順調です」
「ほんまに?今の間は何や」
「細かいところ気にしないのー」


とあるレストランでお食事中、こんな些細な会話でさえ楽しみを感じていた。やっぱり普段話さないと、こういう2人きりの雰囲気が緊張もするけど、喜びに満ちている。本当は毎日がこんな風だったらいいなんて、思ってしまうこともあるけど。


「あ、そや。今日は大事な話があったんや」
「何?」
「名前、結婚しよう」
「…うん。知ってるけど」


その言葉を唐突に言われ、どう反応していいのか分からない。結婚しようなんて、そんなのかなり前から約束していることで、今更言うことじゃない。それとも確認してるの?何これは、私よく分からない。


「結婚は、するんでしょ?それが、どうしたの?」
「ちゃうわ、そういう意味やないねん。結婚するんや!」
「うん、だから、」
「式挙げるぞって言うてんねん」
「…え」


それは要するに、結婚するってことですね。不意に出てしまった言葉に、マサキ君は「そ、そうや。そういうことや」と返す。何だこの気まずい会話は。っていうか式挙げるって…


「や、やっと、ってこと?!」
「何でそんなに反応遅いねん…」
「え、だって、今までそんな話なかったから」
「…待たせてすまへんかったな」


手を取ると、そっとキスを落とす。何処かの王子さまがやりそうなそんな行為、マサキ君には似合わない。だけど、だけど、どうしようもなく幸せ。それ以上の幸せがもうすぐだって分かると、少しだけくすぐったくて、でもやっぱり幸せです。



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