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昔バトルしたときよりもうんと大人びたユウキ君は性格が捻じれていた。数年前まではバトルに対して熱意を持ち、爽やかな笑顔を振りまいていたのに、最近ではその性格はどこへ行ったのやら。

話すたびに、意地悪言ってきたり、人を馬鹿にしたり。私が年上だってこと、絶対ユウキ君は気にしてない。昔みたいにもっと楽しくバトルしたいんだけど、今じゃ彼の足元にも及ばない力の私だと、ユウキ君は相手にしてくれないかも。

そんな気持ちをはっきりと言ってしまった2日前。それからユウキ君と口きいてない。謝ろうと思わないけど、多分ユウキ君も謝ろうなんて思ってないんだろうな。だって意地っ張りだし。お互い見つけると目を逸らしちゃって。ちょっとイラッと来るんだけど。ホント、私もユウキ君も素直じゃないんだなぁ。

こんな小さなことでケンカして…迎えたのは最悪の誕生日。どうしてこんなにも重い心を引きずって、誕生日を迎えなくちゃいけないだろう。

12時丁度、両親が最初に祝ってくれた。多分当たり前といえば当たり前。当然といえば当然のことなんだけど…だって今は同じ屋根の下で暮らしているわけ。心の隅で期待していた言葉を、今すぐにでも消してしまいたい気持ち。
そんな時、

ポケナビが、鳴った。誰からだろう、疑問に思ったその先に表示された文字はユウキ君、だった。心臓がどくんと跳ね起きる。こんな時間に、一体何の用だろう。


「もしもし」
『…』
「ユウキ君、だよね?」
『名前さん』


名前を呼ばれ、一旦会話が切れた。どうしよう何でこんなにも気まずいんだ。お願いだから早くしゃべって。
そしてその沈黙を破ったのは、意外な一言だった。


『名前さん、誕生日おめでとう』
「…え?」
『今日、誕生日でしょう?』
「うんそうだけど、言ってくれるなんて思ってなかったから」


先日ケンカしてから一言もお互いしゃべってない。そんな相手から電話がかかってきたと思えばこの一言。嬉しさと同じくらいの驚きが胸を駆け巡っていく。


『ねぇ俺が一番?』
「は、何が」
『俺が一番最初におめでとうって言った?』
「ううん、両親が一番最初」


返ってきたのは沈黙だった。どうしてそんなことを気にするんだろう。電話の向こうでくそっとか舌打ちしている音が聞こえる。何を荒れているんだユウキ君。少しだけ経ってから落ち着いた声で彼は言った。


『一番に言いたかったんだ、名前さんに。負けた」
「そりゃ仕方ないよ。でも私たちケンカしてたんだよね?」
『………』
「もしかして、忘れてた?」
『そんなことありませんよ。ちゃんと覚えてます』


本当だろうか。声、震えてるけど。


「この間はごめんね。あの、反省してるから」
『俺こそすみませんん』
「こんなこと聞くのいけないかもしれないけど、何で怒ったの?」
『だって、』


俺確かに名前さんより年下だけど、それで足元に及ばないとか言われても、こされたくないのは俺だって一緒だし。名前さんに追い抜かれたくないし。楽しいバトルしたいとか言われても、名前さんとはそういうので終わりたくない。

正直彼が言いたいことがよく分からなかった。だからそれをそのまま口に出してしまった。私どうしてこういうところだけは素直なんだろう。


『俺、さ』
「ん、何?」
『名前さんの近くにいたい。誰よりも名前さんの一番でいたい』
「え、」
『名前さんのこと好きだよ』


その言葉に込められたユウキ君の気持ちとか考えると、どんどん頬か熱くなっていって会話を続けていられない。衝動的に電話を切り、そのままベッドへダイブした。そんなの、意味わかんない。怒った理由も、好きって言われる理由も、私には分かんないよ。



翌日、電話を一方的に切ってしまったことに怒ったユウキ君は家に押しかけてきた。ちょっと前まで気まずかった私たちは、どこへ行ったんだろう。



あんこさんへハッピーバースディ!


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