txt | ナノ

部活が終わったのは、5時くらいのことだった。浜野に漫画を返すときが来た、と思えば足は直ぐにサッカー部へと向かう。でも私、サッカー部が何時に終わるか知らないんだった。まぁいいか、待っていれば。
校庭に出てみると、そこではサッカー部のみんなが練習をしている。当たり前の光景、当たり前の状態、いつも通りの空間。まだ練習は続きそうな雰囲気で、もしかしたらサッカー部って、6時とか7時くらいまで練習してるの?何で隣の家にサッカー部員が住んでいるというのに、私はそんなことも知らないんだ。理由は多分簡単だったけど。
ふと見おろして場所に倉間くんの姿が映る。そうだ、倉間くんはサッカー部。毎日毎日練習頑張ってるんだよなぁ。そういうところって、すごく尊敬出来るかもしれない。何かひとつのことに集中して、それを頑張るって、すごくカッコイイじゃん。

「お前、ここで何してるんだよ」
「、うわっ。だ、誰?!」
「そりゃこっちの台詞なんだけどね」
「は、初めまして…」

声をかけてきたのは仁王立ちで私を睨み付けている女の子だった。だけど普通の子と違ってスカートは長いし、怖いし。少しだけ身を縮ませた。だけど相手の子はお構いなしに私に詰め寄ってくる。ひぃぃ私何もしてませんよっ。

「こんなとこでコソコソ何してんだ?」
「な、何もしてないですよ。ただちょっと用があって」
「誰に?」
「浜野…に、用があって」
「ふーん。浜野にねぇ」

女の子は疑り深い視線を尚も寄せ、どうも私に追求したいらしい。だけど嘘は言ってないんだから、これ以上喋ることなんて何もない。だから早く見逃してください。
思いが通じたのか、その子は「もういいよ」と残して、帰っていく。だけどその先にはサッカー部の人たちがいて、さっきの怖い子、サッカー部員だったというのか?!女の子だからきっとマネージャーだと思うけど…よし、明日茜ちゃんに色々聞いてみよう。





正直暇だったんだ。私の部活はすでに終わっているというのに、サッカー部はちっとも終わるような気配を見せない。…正直、暇だったんだ。校内一回りするぐらいの時間あるかなぁなんて考えたのがバカだったんだ。校庭に戻ってきたとき、そこにはサッカー部顧問の音無先生が誰かと話しているだけ。完全に遊びすぎた。

「くそぉ。バカなこと考えるんじゃなかった…」
「何がだよ」
「校内回ろうなんて、バカみたいじゃん…」
「まぁ名字は元からバカだけどな」
「…へ?」

何処からか、私の独り言に相槌を打ってくれる心優しき人がいるみたいだ。振り返るとそこには制服を着たお隣さんがいた。じーっと見つめれば「何だよ」ってちょっと恥ずかしそうに呟いている。
この人が心優しき人?私の勘違いだったみたい。

「お前それどういう意味だよ」
「いててて、抓らないでよ!どう考えたって、そのまんまの意味でしょ!」
「うるさい。つーか名字、ここで何してたんだよ」
「倉間くんこそ、何で制服なの」
「お前殴るぞ」

部活終わったから普通に着替えて今から帰ろうとしてるだけじゃん、お前そんなことも分からないの?バカだろ、いやバカだったな。って黙っておけば言いたい放題言ってくれるものだ。当たりすぎて何も言えない。くそ悔しいな。
それから倉間くんは一言呟いた。帰るぞ、って。何ですかそれ。私も一緒に帰るってことですか?肩並べて、道路のど真ん中を歩いていくんですか?いや流石にそれは危ないけど、少しだけ複雑。あぁでも“友だち”だったらそのくらいするのかもしれない。


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -