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「レッド…これ、レッドがやったの…?」
「そうだよ。名前、どうしてそんな顔してるの?」
「な、何でもないよ」


目の前に広がるさっきまで生きていて動かなくなった赤い物体を見つめ、静かに答えた。いや、そう答えるしかなかった。
きっと、レッドは何も分かっていない。
自分が今何を手に持っていて、何をしたのか、それが果たしてどういうことなのか――分かっていないんだ。


「わ、私、これ片付けてくるね」
「いいよ。名前の手が汚れる。僕がやる」
「触らないで!」
「…名前?」


思わず出てしまった怒鳴り声に、レッドの体がびくっと跳ねた。とっても不安そうな顔で、「どうして怒ったの?」と聞く。慌てて言った。


「ごめんいきなり怒鳴って」
「怒ってないから大丈夫」
「でもこれは私が片付けるから。だからレッドは何もしないでここで待ってて」


優しく言えば、レッドはにこりと笑って「分かった」と返してくれる。
私は手持ちからユンゲラーを出し、サイコキネシスでそれを移動してもらった。歩く度に、目頭が熱くなる。だけどダメ。レッドの前では。絶対に泣いちゃ行けない。





レッドと一緒にいた洞窟から少し離れ、シロガネ山でもまだ温かい土がある場所へ、やって来た。ユンゲラーが、持っていたものをその場にそっと置いてくれる。
そして私は崩れさり、大声で泣き出した。


「ごめんなさい…!本当に、ごめんなさい…!」
「あなたが悪い訳じゃないの。だけど、レッドを許して…!」
「本当に、ごめんなさい…!」


止まらない涙を、止めようとは思わなかった。小さい頃から一緒に遊んできて、まるで兄のように私を可愛がってくれた人への涙を、そう簡単には止められない。ここへ来て、どうしてレッドに会ってしまったのか。レッドに会って、「名前に会いに来た」なんて用件を言わなければ、こんな赤く染まった結末になることなんてなかったのに…!


「名前?ここで何してるの?…泣いてる、の?」
「レッド…」


見つかった。不信に思われた?でも大丈夫。レッドは私を殺さない。好きだって言ってくれたから。絶対守るって言ってくれたから。だからこそレッドは、この人を殺してしまったのだから。
覗き込むレッドの首に腕を伸ばし、抱きついた。レッドは優しく、受け止めてくれる。


「どうしたの?何か、悲しいことでもあった?」
「…ううん。大丈夫。私、レッドがいれば大丈夫だから」
「僕も、名前がいれば生きていけるよ」
「ありがとう」


レッドが何の躊躇いもなくこんなことをするのは、私のせい。私は、レッドを裏切らない。裏切れない。
レッドのことが好きだから。レッドを絶対守るって誓ったから。
大丈夫。レッドがどんなことをしても、私が隠し通してみせる。私が上手く隠せば、誰かにバレることなんて、絶対にない。
だけどもう、戻れないね。あの頃の私たちには。


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