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私お昼は仕事あるから、電話しないでね。そうだなー夜の9時くらいにしてくれると嬉しいかな?じゃないと家にいないしね。え、携帯にかけるから気にしないって?ちょっと止めてよ、携帯にはかけてこないで。それにあんた、私の携帯番号知らないでしょ?かけてきたりでもしたら、着信拒否するから。止めてよ?
長々と言われて、要するに夜以外かけてくるなと、そういうことらしい。だけどモルさん、私暇だよ。モルさんは仕事してるかもしれないけど、私はこの間高校に入ったばかりで、暇なんだよ?なのにかけてこないでとか、ちょっと酷い。
そりゃ自分が我が侭言ってるってことは分かってる。モルさんにだってモルさんの事情があるから。だから一応9時に電話はかけるようにしてる。
なのに。
最近電話にさえ出てくれない。9時に電話して、携帯じゃなくて家のにしてる。モルさんが私に出した条件はクリアしている。なのに、コール音はしても、彼女の声が聞こえるこおはない。ねぇどうして。どうして出てくれないの?
モルさんとは、近くの本屋さんで知り合った。私がお客で、モルさんがレジのお姉さん。最初は芯が強くて、カッコイイお姉さんなイメージだったけど、まさにその通りだった。よく話すようになると、どんどん惹かれていっている自分がいて、家の電話番号を入手するのに、どれだけの勇気を強いられたか。
だけど彼女と仲良くなれて、お喋りできて、時々一緒にお出掛けもできる。憧れの人とそんな一時を過ごせたら、私は十分幸せ。だけど最近会えなくなってきて、喋るだけでもいいからって電話してるのに、この有様だ。
もしかしてしつこすぎたのかな。だからモルさんに嫌われちゃったのかな。不意に押し寄せた不安に、携帯を強く握りしめた。どうしても、あなたの声が聞きたかった。でもその行動があなたを困らせてしまったのなら、謝るか。だから、無視しないで。怒ってもいいから、電話に出て、声を聞かせて欲しいの。
すると――私の携帯の着信音が鳴った。表示されたのは「モルさん」という文字。心臓が一段と高く跳ねた。どうしよう。かかってきちゃった。こういうとき、どうするの?出るしかないよね。


「もしもし…?」
『あ、名前?よかった出てー』
「モルさん?何か眠たそうな声ですね…」
『ごめんねーさっきまで仕事だったの。最近仕事忙しくて家に帰ると直ぐ寝ちゃうのよ。だから名前の電話にでれなくてね。それを伝えたくって』
「わ、私が悪いんです!モルさんが忙しいの分かってるのに、話したいなんて我が侭だから電話何回もしちゃって」
『ありがとう。出れない時もあるとけど、名前が電話してくれるの、嫌いじゃないの。だから名前が不安になることなんてないんだよ」


モルさんは芯が強くて、カッコイイお姉さんのイメージです。それは今もずっと、これからも変わることはない。だけどこの人はそれ以上の、“優しさ”も持っていたようです。だから私は。我が侭だと分かっていても、それでも求めてしまうのかもしれません。



同じく9/12で発生したもの


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