txt | ナノ

第一印象を言えば、彼は真っ白な紙に描かれたような人。爽やかで、にこっと笑うその顔がとても人気だ。だけど扱いが難しいのがどうかと思うんだ。周りの人は、そこも彼の魅力のひとつだと言う。だけど、あまりにも理不尽なことがあれば、そちゃ普段温厚な私だって切れるんです。
例えば私の部屋なのに、いきなり私を追い出して、「入りたいなら名前を言え」なんて偉そうに…。ここは私の部屋だっての!だけど何度言っても「うるさい。ここは俺の管理下だ」なんて訳の分からない理由を並べてさ。わたしよくナノと付き合ってるなぁ。
ほら今だって、部屋から追い出されて、廊下で待ってるんだよ。何度名前を言っても、それさっき言っただろう、って。あのね、私の名前、1つしかないんですけど。文句言いたくても、言えない。面倒臭い、というのも1つの理由だけど、やっぱりナノが人気な奴、だからかな。あんまり喧嘩売るような真似したら、他の人に何て言われるか…。


「…おい名前、入らないのか」


ドアの向こうから、ナノの声が聞こえてきた。誰のせいで入れないと思ってるの、なんて言いたかったけど辞めた。また名前を言え、って言われるだけ。そんな何回も追い出されて、何回も同じようなことをしてる毎日、もう飽きたの。


「入らないのか?」
「入れてくれないでしょ」
「そんな訳じゃない」
「だって、私の名前1つしかないよ。何度名前を言え、って言われても、毎度同じパターンになるのは仕方ない話でしょ?」
「………」


返答はただの沈黙。ナノが言い返してこないって、何かあったのかな。こんなことでいちいち心配する私って、バカかも。


「お前ってバカだな」
「な、ナノ!どっから湧いてきたの!」
「虫みたいに言うな。ほら入れよ」
「…どうしたの?」


いつもの意地悪なナノじゃない。今日は一段と素直じゃん。もしかして私が普段そうそう吐かない弱音を聞いたから?それで情でも移ったの?ナノって意外と単純なの?


「…もういい。お前は気にするな」
「え、でもすごく気になる」
「…お前は知らなくていいんだっ。ほら部屋入るぞっ」


少しだけ顔を赤らめてそう言うナノは、可愛かった。あぁそうか。どんなに部屋を追い出されて意地悪されても、私ナノのこと好きだから、いつも一緒にいるんだね。もしこの気持ちが続いていけるんだったら、これからも――。



9/12に行ったチャットで発生したもの


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