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「名前ちゃん、この間頼まれた写真、持ってきたよ」
「え、何のこと?」
「ほら、倉間くんと一緒に登校してたやつ」
「わたし、頼んでないし」

だけど茜ちゃんは気にしていなかった。まぁ受け取らない理由も、断る理由も持ち合わせていない私が、要らないとは言えないけど。受け取ると、確かにそこには私と倉間くんが映っていて、そんなこと当たり前なのに、少しだけ胸がくすぐったい。そういえば倉間くんと写真撮るなんて、何年ぶりだろう。

「昔はよく撮ってたの?」
「んーいや、そういう訳じゃないよ。だけど幼稚園からずっと友だちだったからね」
「まぁ一緒のマンションに住んでるしね」
「だけど、遊ばなくなっちゃったからなぁ」

理由は簡単。私は女の子、倉間くんは男の子。ただそれだけ。なのに距離はどんどんはなれていった。今じゃ話すけど、それ程度。多分隣のクラスの浜野との方が仲良いよ。
浜野、とその名前が出てきて思い出した。そういえば私、浜野から借りた漫画10冊まだ返してない。昨日のテストも、この漫画のせいで夜寝るの遅かったんだよ。全く面白い漫画を貸してくれたもんだ。…すごく嬉しいけど。

「ねぇ茜ちゃん。今日サッカー部はある?」
「もちろん」
「ふーん。じゃあ浜野忙しいんだね」
「何か用でもあったの?」
「漫画返そうと思って」

でも部活があるんじゃ、止めておいた方がいいかな。疲れてるところに漫画10冊ってキツいのかもしれないし。私だったら、送り返すかも。
それに部活が終わる時間まで待ってる気にもなれない。今から返すとなると、先生に見つかったりしたら面倒臭いし。

「返せばいいじゃん。名前ちゃんも今日部活でしょ?」
「あ、そうだった」
「だからいい時間だし」
「んーそうだね…でも、重くないかな?漫画10冊だよ?」
「そんなの関係ないって」

なんと。
さらりと酷いこと言う茜ちゃんに「そうだね」としか相づちを返せなかった。あんまり相手のこと考えないのかな。もしかして眼中にあるのは神童君だけ?それはそれで浜野可哀想だ。だけどいつまでも漫画10冊を手持ちに置いておくのも嫌だった。仕方ない。浜野には可哀想だけど、今日は漫画10冊を持って帰ってもらおう。


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