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「…名前ちゃん、今日の朝、倉間くんと登校してたね」
「あ、茜ちゃん!」
「ほら、見て。撮ったんだ」
「茜ちゃん…それ、盗撮って言うんだよ…」

テストも終わり、帰ろうと思っていた時、クラスメイトの茜ちゃんから声がかかる。そりゃ確かに倉間君と一緒に来たけどさ。別に珍しいことでもないと思うよ。だって一緒のマンションに住んでるんだよ。

「…だけど何か気になったから」
「そりゃそうだよね。茜ちゃんサッカー部のマネージャーだし」
「そうじゃなくて…名前ちゃんと倉間くんの関係」
「か、関係、ですか」

昔よく聞かれたかもしれない。どうして女の子の私が、男の子の倉間君と一緒にいるの?って。そんなの、居たいからに決まってるのに。女の子と男の子はそう簡単に居ないって、常識みたいになっちゃってるんだね。困ったモノだ。

「でも改めて聞かれると、分かんないかも」
「…分からないの?」
「あれ、私って倉間君の何だっけ」
「聞いてみたら?同じマンションに住んでるんでしょ?」
「…あ、そうか」

茜ちゃんの提案の採用し、今日倉間君の家に押し掛けることに決定した。いや押し掛けるなんて嫌な言い方はよそう。ちょっと質問しに行くんだよ。
今思えばどうしてこのとき、電話するっていう選択肢がなかったのか不思議だ。やっぱり私の頭って残念な匂いがする。





「くーらまくーん」

その日の夜、ベランダから私は彼の名前を叫んでみた。同じマンションっていうか、お隣の部屋に住んでる。
夕方とかだと、倉間君は部活でいないし。夜しかないんだよ。だから近所迷惑だ、とか言われて怒られても、仕方ないんだよきっと。

「倉間君、出てこないとインターホン押すよ」
「ここから倉間君の名前大声で叫ぶよ」
「くーらまくーん」
「…うるさい!近所迷惑だ!」
「おーやっと出てきたー」

あ、やっぱり近所迷惑だとか何とか言いますよね。分かってたけどね。倉間君のことだから。でもだったら、一番最初の叫びで出てきて欲しい。

「倉間君こんばんわ。ちょっといいかな」
「…毎回ベランダから俺の名前呼ぶの止めてくれたらいいぜ」
「分かった分かった。止めるからさ」
「名字って軽いよな…」

まぁまぁそう呆れたような顔をしないで下さいよ。確かにちょっとうるさかったかもしれないけど、今度から抑えるからさ。

「という訳で倉間君、質問です」
「何だよ」
「私と倉間君って、関係は何だっけ」
「…さぁ」

え、そこは即答なんだ。もっと何か考えて発言してよ。っていうか答えになってないし。さぁって何。さぁって。分からないってことだよね。私と倉間君って、分からない関係ってことですかね。

「そんなくだらない質問、何でするんだよ」
「今日茜ちゃんに聞かれたから。倉間君と私は何なのって」
「…友だち、じゃねぇの?」
「…だよね、きっと」

その簡単且つ明確な答えを、私はどうしてあの時さらりと言えなかったんだろう。確かに友だちだよ。間違えの欠片もない、素晴らしい回答。今度から質問があったとき、全部これで答えておけば大丈夫ってことか。だけど何でかな。友だちってとってもしっくりきて、私と倉間君の関係そのものなのに、何か納得いかない。きっと牛乳を最近飲んでないせいだんね。


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