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その日の朝は最悪だった。どうして気付かなかったんだろうと、自分の頭の悪さを呪う。まさかテスト前日に漫画を読み出してしまうなんて…。
勉強はしたものの、それから読んだから寝たのは2時。バカみたいだよホント。朝の光が目に染みる。
しかもお母さんは起こしてくれない。いいえ、起こしてもらおうと思った私がバカだったんだよね。中2になったんだから、いい加減しっかりしないと。

「行ってきまーす」
「名前、気を付けて行くのよ」
「分かってるよ。もう中2なんだし、大丈夫だって」
「この前車に轢かれそうになった奴の言う台詞?!」
「分かったってば!」

どうしてこう毎朝お母さんにあんなこと言われなきゃならないんだろう。ちょっと危なっかしいのは自分でも分かってるけど、そんな酷いもんじゃないって。だから、もうちょっと私を信用して欲しい。テストの点数だってね!
道路の多い通学路を歩いていたらあれ、と気付く。少し前を歩くのは同じマンションに住む友だち。朝の爽やかな挨拶にでも行きましょうか。
そう思ったんだけど、彼の方が早かったみたい。
振り返り、私に気付く。それはそれで丁度いいから、声を張り上げ、おはようと言おうとしたとき――。

「…っ、名字、横!」
「え、うわああ!!び、びっくりした…」
「…バカだろ、お前」
「倉間君、朝からそれはないよ。おはようでしょ?」
「そういうところ、ホントバカだよな。お前もうすぐ死ぬところだった」
「縁起悪っ」

確かに、多分倉間君が言ってくれなきゃ、今さっき通っていった車に撥ねられたかもしれないけど…朝からバカなんて、そりゃないぜ。
大体、どうしてそんなに朝から不機嫌そうなんだい倉間君。理由を聞いてみると、「名字がバカだから」って、だから傷ついてるのは私だって、分かってますか。

「名字って前もあったよな」
「車に轢かれそうになったこと?」
「うん」
「まぁでも結果的に生きてるんだから、よくない?」
「勝手に言ってろ」

あらら、今ので絶対怒ったな。多分今日は学校で口利いてもらえないだろう。いつもあんまり利いてもらってる方だとも思わないけど。だけど、一緒に歩くことを拒まれたことはない。
だから今日も私は倉間君の後ろを付いていく。別に疚しい気持ちなんてないよ。


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